
退職を決めたはいいけれど、次にやるべきことは“仕事探し”。
でも、いざ就職活動を始めようとすると、自分の中にぽっかりと空白があるのを感じた。
履歴書の書き方がわからない。
面接の受け方もわからない。
というか、そもそも、仕事ってどこで探すの?
ハローワーク? いや、行かない
真っ先に思い浮かんだのは「ハローワーク」だったけれど、正直なところ、あそこに行く気にはならなかった。
理由はいくつかある。
職員の対応がどうこうというより、あの空気感に自分が馴染める気がしなかった。
“何となく自分を否定されているような気がする”、そんな感覚が怖かった。
だから、自宅のソファでスマホを開き、『Indeed』で検索することにした。
「大型免許 危険物」「ローリー 未経験OK」
打ち込んでは、条件を眺めて、閉じて、また開いて……の繰り返し。
履歴書?いつの話だそれは
31年間、公務員一本でやってきた人間にとって、「履歴書を書く」というのはもはや別世界の話だった。
とりあえず、ネットで「履歴書 書き方 中年 転職」と検索。
テンプレートをダウンロードして、職務経歴の欄に「○○市消防本部勤務」と書き込む。
そのあとが困った。
「志望動機」……
「自己PR」……
あまりに白々しく感じて、何度も書いては消しての繰り返しだった。
だって、本音は「もう公務員やりたくない」「現場仕事がいい」「人間関係に疲れた」なんだから。
でも、書かなきゃ始まらない。
どうにかこうにか形にして、PDFで保存して、応募ボタンをポチった。
そして、面接へ。31年ぶりの戦場へ…
面接は、とある運送会社。
面接室のドアをノックした瞬間、心臓がバクバクしていた。
31年ぶりだ。
学生のとき、消防の採用面接を受けたとき以来。
「前職は……消防士? すごいですね〜」
「体力は問題ないとして……大型はどれくらい運転してましたか?」
そんな会話の中で、少しずつ緊張がほぐれていく。
でも、終始頭の中は真っ白で、たぶん言葉も拙かったと思う。
それでも、こうして一歩を踏み出したことが大事なんだと、帰りの車の中で思った。
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